最近ニュースでよく目にする「106万円の壁」の撤廃。パートやアルバイトで働いている方はもちろん、配偶者が扶養内で働いている方にとっても気になる話題ですよね。
「結局いつから変わるの?」「手取りは減るの?増えるの?」「今のうちに何かやっておくべき?」
今回はそんな疑問にお答えしていきます!
そもそも106万円の壁って何?
まず前提として、106万円の壁とは社会保険(厚生年金・健康保険)の加入基準となる年収のボーダーラインのことです。
現行制度では、パートやアルバイトの方が以下のすべての要件を満たすと、勤務先の社会保険に加入する義務が発生します。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8万8,000円以上(年収約106万円)
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 従業員51人以上の企業に勤務
- 学生ではない
この「所定内賃金が月額8万8,000円以上」という賃金要件がいわゆる「106万円の壁」と呼ばれているものです。なお、この判定には残業代・賞与・通勤手当などは含まれません。
年収が106万円を超えると社会保険料の負担が発生し、手取りがガクッと減ってしまうため、多くの方が年収を106万円以下に抑える「働き控え」をしてきました。厚生労働省の広報資料では、今回の改正により約90万人の労働者が新たに社会保険の加入メリットを受けるとされています。
106万円の壁撤廃はいつから?
結論から言うと、賃金要件の撤廃は、2025年6月に成立した年金制度改正法で決まりました。
ただし、施行時期は「公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断」とされており、現時点で正式に2026年10月と確定しているわけではありません。報道では2026年10月が有力とされていますが、あくまで見通しである点に注意が必要です(参考:厚生労働省|年金制度改正法が成立しました)。
ちなみに、企業規模要件(現在は従業員51人以上)についても、2027年10月から2035年10月にかけて段階的に撤廃される方針が示されています。つまり将来的には、企業の規模に関係なく、週20時間以上働けば社会保険に加入する形になっていきます。
改正スケジュールまとめ
| 時期 | 改正内容 |
|---|---|
| 公布から3年以内(2026年10月が有力) | 賃金要件(月額8万8,000円)の撤廃 → 106万円の壁がなくなる |
| 2027年10月~ | 企業規模要件の段階的撤廃が開始(51人→段階的に引き下げ) |
| 2035年10月 | 企業規模要件の完全撤廃 |
撤廃後、何が変わる?
106万円の壁が撤廃されると、少なくとも対象企業では「いくら稼ぐか」より「週何時間働くか」の重要性が高まります。
ただし、企業規模要件はすぐにはなくならず、2027年10月から2035年10月にかけて段階的に撤廃されます。したがって、賃金要件撤廃後すぐに、すべての職場で「週20時間以上=社会保険加入」となるわけではありません。
なお、学生ではないこと、2か月を超える雇用見込みがあることなどの要件も引き続き残ります。
また、週20時間未満であれば勤務先の社会保険の加入対象にはなりませんが、注意点として週20時間未満でも年収が130万円以上になると配偶者の扶養から外れ、国民年金・国民健康保険の負担が発生します。勤務先の社会保険の加入要件と、扶養の判定基準は別物ですので、混同しないようにしましょう。
つまり、106万円の壁は消えますが、新たに「週20時間の壁」が実質的なボーダーラインとして意識されるようになるということです。
手取りはどう変わる?
ここが一番気になるところだと思います。
年収106万円前後の場合
社会保険に加入すると、健康保険料と厚生年金保険料が毎月の給与から天引きされます。年収106万円前後の場合、社会保険料の負担は年間約15万〜16万円程度となり、手取りは大きく減ります。
例えば、これまで年収105万円で社会保険料ゼロだった方が、撤廃後に週20時間以上働いて社会保険に加入した場合、手取りが約15万円減る可能性があるということです。
年収を増やせば手取りは逆転する
ただし、年収を125万円〜130万円程度まで増やせば、社会保険料を払っても手取りは以前と同等かそれ以上になると考えられます。
つまり、中途半端に106万円前後で止めるよりも、思い切って収入を増やした方が結果的に手取りが多くなるケースが多いです。
手取りイメージ(概算)
| 年収 | 社会保険料(年間概算) | 手取りイメージ |
|---|---|---|
| 100万円(加入なし) | 0円 | 約99万円 |
| 106万円(加入あり) | 約15万円 | 約89万円 |
| 125万円(加入あり) | 約18万円 | 約104万円 |
| 130万円(加入あり) | 約19万円 | 約108万円 |
※上記は概算であり、加入する健康保険組合や地域によって金額は異なります。所得税・住民税を含めた概算です。
社会保険加入のメリット
手取りが減ることばかりが注目されがちですが、社会保険に加入することで将来的なメリットも大きいです。
①将来もらえる年金が増える
厚生年金に加入すると、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取れるようになります。仮に月収8万8,000円で20年間加入した場合、年金が年間約11万円程度増えるとの試算もあります。長生きすればするほど、そのメリットは大きくなります。
②傷病手当金・出産手当金がもらえる
国民健康保険にはない傷病手当金や出産手当金が受けられるようになります。病気やケガで働けなくなったときのセーフティネットが手厚くなるのは大きいですね。
③障害厚生年金・遺族厚生年金の対象になる
万が一の場合に、障害厚生年金や遺族厚生年金を受け取れる権利も生まれます。
政府の支援策も用意されている
「手取りが減るのは困る!」という声に対して、政府も手をこまねいているわけではありません。
撤廃後に新たに社会保険に加入する方向けに、事業主が通常より多く保険料を負担して本人負担を軽減できる特例措置が導入される予定です。
対象は、従業員50人以下の企業などで、企業規模要件の見直しにより新たに加入対象となる短時間労働者のうち、標準報酬月額12.6万円以下の方です。措置期間は3年間の時限措置となっています。
さらに、事業主が追加で負担した保険料については制度全体で全額支援される仕組みが設けられます(参考:厚生労働省|年金制度改正法が成立しました)。
ただし、この特例措置はあくまで3年間の時限措置である点には注意が必要です。恒久的なものではないため、特例が終了した後のことも視野に入れて働き方を考える必要があります。
投資家目線で見る106万円の壁撤廃
ここからはこのブログらしく、投資家目線でもこの話題を整理してみます。
手取りが減る分は「長期投資のリターン」と似ている
社会保険料の負担増は、短期的には確かに手取りが減って痛いです。しかし、将来の年金増額という形で長期的なリターンが見込める点は、私たちが普段やっている積み立て投資の考え方と似ています。
毎月の積み立てが短期的にはお金が減る行為であっても、長期で見ればリターンが期待できるのと同じように、社会保険料も「将来のための強制積み立て」と考えれば、精神的なハードルは少し下がるのではないでしょうか。
手取りが減った分、NISAの積み立て額を調整するのもアリ
社会保険料の負担が増えて家計が厳しくなる場合は、積み立て投資の金額を一時的に見直すのも選択肢の一つです。無理して生活費を切り詰めて積み立てを続けるよりも、持続可能なペースで投資を続けることの方が大切です。
今のうちにやっておくべきこと3つ
①自分が対象になるか確認する
まず、今の雇用契約で週20時間以上働いているかを確認しましょう。週20時間以上なら、賃金要件の撤廃後は社会保険の加入対象になる可能性があります。
②年収のシミュレーションをしておく
手取りが最も減るのは年収106万〜120万円あたりです。働く時間を増やせるなら、年収125万円以上を目指す方が手取り面では有利になる可能性があります。勤務先のシフトや時給と照らし合わせて、自分のベストな年収ラインを把握しておきましょう。
③勤務先の対応を確認する
企業側の保険料肩代わり特例を導入するかどうかは、勤務先次第です。事前に勤務先の人事・労務担当者に確認しておくと安心です。
まとめ
最後にポイントを整理しておきます。
- 106万円の壁(賃金要件)の撤廃は法律で決定済み(施行は公布から3年以内、2026年10月が有力)
- 撤廃後は「週20時間以上働くかどうか」が社会保険加入の実質的な判断基準になる
- 年収106万円前後では手取りが約15万円減る可能性があるが、年収125万〜130万円程度が手取り逆転の一つの目安
- 社会保険加入には将来の年金増額や傷病手当金などのメリットもある
- 3年間の保険料負担軽減の特例措置も用意されている
- 最新情報は厚生労働省の公式ページで確認を
106万円の壁の撤廃は、短期的には手取り減少という痛みを伴う改正です。しかし、将来の年金増額や保障の充実を考えると、長期的には多くの方にとってプラスになる可能性があると個人的には考えています。
とはいえ、制度の詳細は今後変更される可能性もありますので、最新情報をしっかりチェックしつつ、自分に合った働き方を考えていきたいですね。
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資・税務・法律などに関する助言を行うものではありません。記事内の情報は作成時点のものであり、最新情報と異なる場合があります。

